痛みより、固まること

相談の最初に本人が書いていたのは「痛いのも怖いけど、それより緊張で固まって、何もできなくなるのが怖い」でした。

人前で話すときも、病院で順番を待つときも、緊張すると体が動かなくなる。そういう自分を知っているから、当日もきっとそうなる。固まったまま進められたらどうしよう。止めてと言えなかったらどうしよう。止めたら嫌な顔をされるんじゃないか。心配は、相手が止まってくれるかどうかに集まっていました。

合図を決める

やり取りの中で決めたのは、合図の言葉です。「やめて」だと強すぎて言いにくい、と本人。そこで「少し待って」にしました。

約束も一緒に決めています。「少し待って」と言われたら、その場で止まる。理由は聞かない。再開するのは、本人が「いいです」と言ったときだけ。こちらから「そろそろ」とは言わない。

声が出なかったときのために、手でベッドを2回たたく合図も足しました。

6回の「少し待って」

当日は、部屋で1時間ほど話してから、時間をかけて進めました。話している間、本人は合図の約束を自分の口でもう一度言っています。覚えているか確かめたかったそうです。

「少し待って」は6回ありました。そのたびに止まって待っています。短いときは数十秒、長いときは数分。本人が深呼吸をして「いいです」と言ってから、また少しずつ進めました。

終わってみると、予定していた時間の倍近くかかっていました。時間は延ばすことはあっても、短くすることはありません。この日もそうしています。

止まってくれると分かったら

帰り際、本人が言ったのはこういうことでした。「止まってくれるって分かってから、逆に止めなくてよくなった」。

5回目と6回目の間は、それまでよりずっと長く空いていたそうです。止めても大丈夫だと分かると、体の力が抜けやすくなる。本人はそう感じた、と話していました。

合図は、当日決めてもいい

合図は言葉でも仕草でもかまいません。事前に決められなければ、当日部屋で決めても大丈夫です。大事なのは、合図が使われたらその場で止まる、という約束が守られることです。