日程が決まった夜から

やり取りは順調でした。質問にも全部答え、本人も「この日なら大丈夫です」と日程を決めています。

ところが、その夜から眠れなくなったそうです。授業の準備をしていても、ふと日付が頭に浮かぶ。3日前、短いメッセージが届きました。「すみません、やっぱり延期させてください」。

延期の返事に書いたこと

りょうの返事は四つだけです。理由は書かなくていい。キャンセル料はかからない。こちらから日程の催促はしない。気が向いたら、いつでもまた連絡してください。

引き止める言葉は入れていません。「楽しみにしていました」のような一言も、相手には重く届くことがあるからです。

それきり、2か月ほど連絡はありませんでした。こちらからも送っていません。

2か月後の連絡

「前に延期した者です。覚えていますか」。2か月後に届いたメッセージです。

あとで本人が話してくれたのは、待っている間のことでした。もし催促が来たら、それで全部やめようと思っていたそうです。来なかったから、もう一度考えられた、と。

何が怖かったのかも、このとき初めて言葉になりました。日程が決まると、その日に向かって全部が動き出して、もう引き返せない気がした。怖かったのは当日のことではなく、引き返せなくなることでした。

引き返せる道を、先に見せる

そこで、二度目は進め方を変えています。日程は直前まで仮のままにする。待ち合わせ場所に着いた時点でも、部屋に入ってからでも、やめていい。キャンセル料も中止料もかからない。これを、会う前に文章でもう一度送りました。

本人は、その文章をスクリーンショットで保存していたそうです。不安になったら見返せるように、と。

当日

待ち合わせで本人が最初に口にしたのは「今日、やめてもいいか途中で聞いてもいいですか」でした。いつでも、と答えています。

部屋に入ってから、本人は実際に一度聞きました。「まだやめられますか」。やめられます、と答えると、少し考えてから「じゃあ、続けます」。その日、本人は最後まで自分で決めて進み、卒業しています。

延期を言いやすいかどうか

延期やキャンセルを言い出しやすいか。理由を聞かれないか。そのあと連絡が続かないか。これは、相手を見分けるいちばん分かりやすい物差しの一つです。